入社前に応募者の「人となり」を見極めたくても、採用選考時に面接、筆記試験、適性検査などの一般的な選考手法を実施している限り、結局のところ、自社で活躍してくれる人なのか、問題行動を取ってしまう人であるのかなど、潜在的な能力も含め、よくわかってはいないが採用を決定する・・
それが多くの採用担当者が直面する現実かと思います。
そうである場合、何が大事になってくるかというと、「入社後の早期見極め」です。
ただ、中小企業で新入社員の上司となる方は、プレイングマネージャーとなっているケースがほとんどであるため、マネジメントに専念し、「新しく入った方の行動を見守る」ということは厳しいはず。
しかし、採用選考時に「問題行動を取ってしまう人かどうか」などの見極めをしていない限り、いっしょに働いていけるか否かは、当然と言えば当然ですが「選考後※」に見極めていくしかありません。
※選考「前」に人となりや潜在的資質を見極める手法は採用アセスメントと言います。
もし問題行動の多い人を採用してしまった場合、早め早めに対処していかなければ、その人の影響で、
・他の社員がなびいてしまい、徒党を組んで会社批判をしてしまう
・または、一斉に退職をしてしまう
・真面目に仕事をしていた人が割を食って負担が急増し、退職をしてしまう
など、あとで取り返しのつかない打撃を受けてしまうこともあります。経営者にとって想像するだけでも恐ろしい話ですが、オモテには出てこないだけで実際には巷に溢れている話です。
「経営者自身の問題」ということも十分に想定できるでしょう。
それを横に置いておくとすれば、採用選考において、
間違った採用基準で間違った内定を出し、
組織に引き入れてはいけない人を採用してしまった・・
ということに過ぎません。
ただ、これを真に認知するのは非常に難しいんですね。
釣りで例えるなら、釣りたい魚がいるにも関わらず、その釣り堀には釣りたい魚がほんの僅かしかいないのに釣りをしている状態。
そして、時間制限もあって、気持ちは焦るばかり。釣りたい魚を釣るための技術も持ち合わせておらず、釣ることができるのは、意図していない魚ばかり・・・。
だいたいこんな感じです。
さらに、釣りたい魚も実質的によく分かっていない・・というケースもあるでしょう。
では、どんな人に注視すれば良いでしょうか?
特に気を付けたいのは、組織に悪影響を及ぼすような行動を取る社員ではないかどうかです。以前のブログでも書きましたが、具体的には、以下のように感じる社員であれば、黄色信号がすでに点灯しています。
・注意をしても言い訳が多い=自分の非を一切認めない
・自己中心的な(わがままな)行動が多く、他者批判が多い
・子供っぽい
・人との関わりを避ける人
・承認欲求が強い
・隙あらばサボろうとする
・何度注意しても同じミスを繰り返す
・行動の先を想像できない
・四角四面で融通が利かない
・曲解してしまう
・勤怠が不安定で遅刻早退をしても平気 etc
つい言い訳をしてしまう・・など、多くの人に当てはまるでしょうし、すべてにまったく当てはまらないという人※は、本当に希少です。ですので、ある程度のことは許容していかなければ、中途採用は成立しません。
※こんな人がいたら経営者なら誰もが欲しがる人材の可能性あり。ただし、目立たず活躍していたとしたら、見落としているというケースもあるのが怖いところなんですよね・・。
しかし、
片目をつぶるどころか、両目をつぶってしまったり、はたまた「仏のように薄く目を開いているような状態」だと、組織はいつまで経っても
「少数精鋭の組織」にはなれず、「着ぶくれ(単に肥大化)した組織」
となってしまい、機能不全に陥ってしまうリスクを常に抱えることになります。
そして、人を雇っても雇っても、経営が楽になることはなく、「どんどん経営者の負担のみが増えていく」という事態になるわけです。
単に現場の仕事(特に作業的な仕事)をこなしてさえくれたらいいということであれば、今後も現状の採用方法でその場しのぎは可能になるかもしれませんが、社員を見渡して
「マネジメント層が圧倒的に不足している・・」
「重要な仕事を任せられる人がいない・・」
という思いを抱くのであれば、今の選考方法を変えていかなければ、いつまで経っても同じ悩みを抱えてしまい、負のループから抜け出せないのです。
今回の採用が「たまたま失敗したわけではない」ということをどれだけ早く認識できるかどうかで組織の安定感は大幅に変わっていきます。
・「応募者を集める」のも大変
・「人を見極める」のも大変
・「見極めて、応募者から内定受諾をもらう」のも大変
・「入社してから人に教える」のも大変
そして、
・「人が定着してくれるように生産性を高め、給与を含めさまざまな福利厚生を充実していく」のも大変
ただ、1つ声を大にして言いたいことは、
最初のボタン(採用選考)の掛け間違いをしてしまうと、その後の指導や教育、定着促進など「大変さの質」が全く異なるということです。
それだけ大変なことだらけの経営ではあるので、逆に、「やりがい」を感じることができる・・と言えるのかもしれません。
何でもかんでもうまくいってしまったら、手ごたえも有難みもないですしね・・。
ただ、あまりにも重い負担が続くと心を病む経営者もいます。
闇を抱え込む前に、また、誤った選択肢を採らないためにも一度身近な専門家に相談してみてください。
今回お伝えした「入社後の早期見極めが大事である」ということは、当たり前と言えば当たり前のことです。
ただ、その当たり前のことができていないから、大企業や中小企業を問わず多くの企業が問題を後回しにして、
問題を明確に認識するには時間も掛かりますし、その問題に腰を据えて取り組むにも一定の期間を要します。
それ故に、「もうこの人と一緒に働くことはできない・・」と、限界がきてから取り組むのではなく、専門家等の第三者の力を借りてでも早めに認識して、地道に取り組みを積み上げていくことが大切です。
ただ、あまりにも主観的で短絡的な判断をするなら、それも問題です。状況によっては、新しく入ってきた人というよりも、その上司に問題があるというケースも想定できるからです。ですので、「早期見極め」が正常に機能するというのも正直なところ、「組織の成熟度にも依る・・」ということは最後にお伝えしておきます。
そういった意味で、今後の変化の激しい時代を生き抜くためには、経営者や経営幹部が「人を見極める技術」を保有するというのは必須のスキルと言って良いと思います。