経営

【はじめて人を雇う経営者の方へ】起業時に社労士と顧問契約をする必要性はあるか?

結論としては、ひとり法人であれば当然必要はないでしょうし、ひとりかふたり程度パートやアルバイトしか採用する予定がないということであれば、必要性を感じないでしょう。

ただ、一定数の社員やパートさんを雇う必要があるという場合であれば、起業時から社労士と顧問契約をしておいたほうが、それも、単に手続きだけをする社労士ではなく、採用や組織マネジメント(特に問題行動の多い社員)に関する相談に対して的確なアドバイスがもらえる社労士がそばにいてくれたほうがかなり安心して経営の舵取りができるはずです。

早期の関与が有益なケースも意外と多い

当事務所にも、「手続きがある程度頻繁に発生し、煩雑になってくる社員数10名前後の代表者」からお問い合わせを頂くケースは多くあります。

ただ、起業時から現在に至るまでの人にまつわる苦労話をお伺いすると、もっと早く顧問社労士として関与し、人に関するさまざまな悩みや心配事を、客観的かつ冷静なアドバイスをすることによって、不安や怒りなどの負の感情をもっと解消できていたのではと思うことが多いと感じます。

入社する人が従前からの顔見知りで、仕事ぶりや性格もかなり把握しているというケースであれば、ある程度安定的なスタートを切れるかもしれません。しかしながら、求人媒体にお金をかけて、応募者を集めて採用するとなると、どうしても採用で失敗する確率は高くなります。

採用で失敗する確率が高いということは、必然的に社内でさまざまな問題が発生してくるということです。たとえば、「お客さんからクレームをもらった」「勤怠に問題があって周囲に負担をかける」「注意をしたら口を聞かなくなった」「感情の起伏が激しく、話しかけづらい」「こちらの意図したことが伝わらず、曲解された・・」など、問題行動の事例はキリがありません。

これらを自分だけで対応していると、状況によっては精神的に参ってしまう人もでてくるでしょう。そんなときに、問題行動を起こす人が「なぜそのような行動をとるのか」「今後どういう行動に発展していく恐れがあるのか」について理解し把握するだけでも精神的な負担を減らすことができます。とはいえ、人間ですから感情的にならずに済むというわけではありません。しかしながら、客観的な視点を持てるだけでも随分と生産的な行動へと変化できるはずです。

この点については、なかなか周囲に適切な助言をしてくれる人がいないため、やはり人にまつわる相談に乗ることのできる社労士の付加価値は高いと思います。

もう1つ大事なのは、助成金

起業時から関与していれば、経営者の考え方、社員のパーソナリティなども含めて全体を把握していくことができるので、助成金も非常に提案しやすくなります。うまくいけば毎月の顧問料もそこまで負担に感じないというケースもあるでしょう。

ただし、昔と異なるのは、すぐに受給できるような助成金はなく、取り組みをスタートしてから1年半後、2年後に受給するというケースがザラなので、やはり運転資金は日本政策金融公庫や民間の金融機関(特に信金さん)からの融資等で準備しておく必要があります。

社会保険や労働保険に関する手続きの手間も意外と大変ですが、入退社が少ないのであれば、専任の担当者を配置しなくてもネットで調べたり、行政に聞いたりしながら対応できるとも思います。

ただ、どうしても給与関係は、以前発生した某大手コンビニの残業代未払い問題を代表として、非常に間違いやすい分野と言ってよいでしょう。代表者自身や身内の方が給与計算をされているケースも多いと思いますが、その給与計算の内容が法的に間違ってはいないかを一度早めに社労士等の専門家に確認しておいたほうが無難です。知らぬ間に、上記のような未払い残業代が発生していたなんてことは頻繁にありますし、対応が遅れれば遅れるほど、その金額がどんどん膨らんでいってしまいます。また、賃金債権の時効も2020年4月から2年から「3年」へと変わったため、発覚した時のダメージはより大きなものになるでしょう。

 

どんな社労士をお勧めしたいか

私は組織の拡大を数年前までは視野に入れていなかったので、自分で自社の決算申告をずるずると5年も続けてしまっていました。ただ、そのお蔭でより税理士さんの仕事の面倒くさい面や何で税理士さんを必要とするのかを肌身に感じています。

その税理士さんに頼りたいと思う最たる理由は、シンプルに計算や記載が面倒な決算申告書の別表四や五などをお願いしたい面も当然ありますが、それ以上に、「実務上どういう扱いをしておけば良いのかという、その匙加減を知りたい」ということです。

自分だけで対応していると、自社や自分だけの狭い情報のなかで選択していかなければならないため、本当に正しいやり方なのだろうか?と常に迷いが生じてしまいます。この不安を解消するために、より広い見識から正しい解を導くサポートをしてくれる専門家に一定のお金を投資することは、その費用に見合うと私は思います。

社労士も同様です。

人に関する相談は、非常にナイーブな問題です。ですので、社員に相談するわけにもいかないでしょうし、親しき同業の方でもよほど自社のことを把握してもらわないと適正な回答を得るのは難しいのではないでしょうか?

また、顧問税理士さんにも相談は可能だと思いますが、「専門分野ではないんですけどね・・」と思いながらの「その顧問税理士さんの経験や知識内での回答」になってしまい、正しい選択ができない可能性もあります。税理士さんもお客様からの質問に対して無下にできるわけがないので、親身になって回答してくれる人もいると思います。ただ、やはり、より良い選択や判断をしたいのなら、「餅は餅屋」だと思います。

また、たとえ社労士に相談したとしても、社労士の試験科目に「人の見極めや人間心理に関する相談」に対応するような項目はないため、あくまでもその社労士の経験や知識の範囲内での回答となってしまいます。なので、この相談に関する分野に関しては、より多くの経験値を積んだ社労士のほうに軍配があがるように感じます。

しかし、ここにも1つ問題はあります。それは、その社労士の人を観る目が「適切か」ということです。いくら長年の経験を積んだとしても、人を観る目を養うことは容易ではありません。では、どうしたら人を観る目を持つことができるのか、人への判断が定まっていくのかというと、

「人を観る」という機会を、その分野のプロフェッショナルの立ち合いのもと、どれだけもてたか

ということが大切です。少なくても数百人の人を観るという機会をもたないと、自分自身がするアドバイスにも自信がもてないのではないでしょうか。さらに大切なことは、見極めた結果に誤りがないかを確認するために、その後も臨床を続けていることでしょう。それぐらい人を見極めるということは難しく、終わりのないことなのだと思います。

ただ、ここまで言っておきながらではありますが、そんな社労士を探すとなったらかなり大変です。近隣で見つけるというのは間違いなく難しくなってしまうでしょう。そういう場合は、まず、「きちんと話を聞いてくれる」「どんな話も一旦は受け容れてくれる」「上から目線ではなく、こちらの心情に寄り添ってくれる」「「質問した情報のみならず、役立つ情報を提供しようという意思がみられる」という方であれば、のちのち不満がでることなく、長い付き合いをすることができるのではないかと思います。

さいごに

日本全国に数万人いる社労士のなかで、自分に合った社労士や上記の条件を満たすような社労士を探すのは本当に大変ですよね。私も同じようにインターネットで探すことも多いので、これだけ情報が多いと選び抜くことが本当に大変だと感じています。最近も大失敗をやらかしました。

ネット上で見極めるための重要なポイントとしては、「代表者の思い」に注目してみてください。成り行きで社労士になったわけではなく(成り行きでも良いのですが)、志をもって業務にあたっている社労士はホームページ自体にもその思いを載せているはずです。その部分に共感できるところがあるなら、一度は会ってみて本当に自分の直観が正しかったのか試してみても良いかもしれません。ただ、良いことばかりを書いていても、現実は全く異なる・・・というケースもあるからこそ、やはり、社労士選びは大変ですよね・・。

周囲に適当な人がいないという方はNoppoも選択肢の1つとして検討してみてください。起業支援にも注力していますので、ご興味のある方は下記のURLをご覧ください。

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※介護・福祉・訪問看護業界以外の方の起業支援にも対応していますので、遠慮なくご連絡ください。

 

ABOUT ME
社会保険労務士 養父(ようふ) 真介
福岡生まれ大阪育ち、東京都杉並区在住。◆大学3回(年)生の1998年に社労士資格を独学で取得。◆コネなし・経験なし・僅かな資金で2008年に独立。◆2009年より介護福祉業界に注力。◆2010年に「人の問題解決」に必要な根幹技術となる「アセスメントセンター」という「能力診断技法」と出会い、数百時間にも及ぶ「人を見極める」という機会を得て、多くの組織が抱える悩みの根源を知る。◆その後、その知見を活かし、クライアントの組織で発生するさまざまな「人の問題」への対応方法について具体的な解決手段を提示し、組織を健全に保つ手助けを生業としている。◆社会保険労務士法人Noppo社労士事務所 TEL:03-6454ー6083 ※お電話の場合、まず職員が対応しますので、「ブログを見て問い合わせた」とお声がけ頂けるとスムーズです。
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