採用

小規模零細企業が組織を健全に成長させようと思えば、想定よりも早い段階で採用活動をスタートする

最近特に実感することは、いかに中途採用で組織を拡大しようとしても、なかなかうまくいっている企業が見当たらないという現実です。

ただ、新卒採用をしている会社がうまくいっているかと言えばそうではありません。

その問題の根源は、会社の体質や選考手法に問題があるのは間違いのないことですが、それ以外に「採用をスタートするタイミング」に端を発しているのではないかと考えています。

「組織を健全に成長させたい経営者」が早めに気づくべきことは、社員一人一人が手一杯になった状態で、「適切な採用」を実施することが非常に困難であるということです。

採用が成功し、内定を出せた後は、新入社員の給与が入社後に重くのしかかってきます。

当然、人件費のプレッシャーを感じないという経営者はいないでしょう。どんどん現金(固定費)が流出していくことになるため、その給与について余裕をもって支払うことができるよう採用前に仕事を110~120%の負荷で請け負い、「入社してくる人分の給与を稼いでから雇う」という考えをもつ人も多いとは思います。しかし、「適切な採用」を実施するためには、その方法では遅いのです。もっと前の段階でそれも比較的余裕のある段階で実施していかなくては、採用を成功させることはできません

中途採用で健全な組織を作り上げることが難しいことは、採用アセスメントという選考手法を導入している会社にとって「至極当たり前のこと」という認識を持ちます。なぜなら、「転職市場が想定以上に荒れている=採用で失敗する確率が高い」ということをその選考過程で熟知することになるからです。

選考手法として面接しか実施していない会社では、面接官が適正な判断基準を有していない可能性が高く、暗闇の中、手探り(感覚)で宝探しをしているようなものなので、採用市場で一体何が起こっているのか、その結果として、各会社で何が起こっているのかを正しくイメージすることは難しいでしょう。そこには採用アセスメントを導入している会社と大きな隔たりがあります。ただ、社内を見渡せば、薄々と感じていることがあるはずです。たとえば、

「絶えず、何かしら揉めごとが発生している」
「経営者がするべき仕事に集中できず、人間関係の調整ばかりしている」
「自ら考えて動ける人の割合が異様に低い」
「お願いしたことをやってもらえれば良いがそれさえもできない人がいる」
「会議では意見さえ出ない」
「会議で意見は出ても、何ら本質的な解決に結びつかない」
「誰も管理職になりたがらない」
「そもそも管理職候補がいない」
「今の管理職自体機能しているように思えない‥」
などなど、挙げだしたらキリがないのではないでしょうか…。

次に、新卒採用ではどうか?

中途や新卒を問わず、適切な選考プロセスとして、まず「一定の応募者母集団を形成」し、その中から「適正な基準を超えた人を選抜する」ということをしなければ、当然、採用が成功するわけがありません。それは採用アセスメントという精度の高い選考手法を活用するか否かは問わず健全な組織作りを目指す企業にとって必要かつ重要なことでしょう。ただ、前提である「一定の応募者母集団を形成する」ことがいま本当に難しくなってきているのです。各社の採用意欲が旺盛であるため、学生の取り合いになっているからです。

このような環境下においては、とにかく、応募者母集団を形成することに苦心します。応募者を集めることにかなりの時間を割かねばならず、ほとんどの小規模零細の採用担当者が採用業務を他の業務と兼務している状況において、その負担は相当なものです。この負担を少しでも軽くするためには、他の社員に担当者の仕事を一定程度割り振る必要があります。しかし、前述したように各担当に110%~120%の負荷で仕事をさせている状態であれば、このような対応を取ることもできず、満足な採用活動ができないという結果をもたらします。その残念なプロセスは以下のとおりであり、目も当てられない「負のループ」に陥ることにも繋がりかねません。

一定の応募者母集団を形成できない

応募があった人の中から相対評価で採用をする

適正な基準をクリアした人ではない確率が高いため、何かしらの問題を抱えたままマネジメントをすることになる

短期間で退職し、上司や指導役が疲弊していく。最悪なケースは、辞めるという選択をしないで組織のメンバーに悪影響を与え続けていく

運よく何とか辞めてもらっても、組織は焼け野原状態となり、採用する余力さえなくなってしまう・・

それでも採用活動をしなければ回らないので採用活動を実施する

余力もない苦しい状況での採用活動になるため、一定の応募者母集団を形成できない

同じことを繰り返す・・

・・・何とも苦しい状況ですが、決して他人事ではないと思います。

だからこそ、思い切った先行投資としての採用活動が重要であり、経営者の「覚悟」がまたここで問われるのだと思います。

その判断が遅れれば、組織を健全に成長させることが難しくなってしまうことにもなるでしょうし、下手に売り上げを伸ばし過重な負担を強いてしまうと、サービスの質の低下を招き、顧客からのクレーム等により現有社員の離職を招きかねません。

・・・

組織を健全に維持するバランスというのは、本当に難しいですよね。人を先行投資で採用をしたものの、予想より売上が伸び悩み、人件費で苦しむということも有り得るでしょうし、会社というのは微妙なバランスの上に成り立っているものと改めて感じます。

採用は、人の人生を背負うことにもなるので、まともな選考活動を実践しようと思えば大変であるのは当然だと思いますが、経営者が求めるような「人材」が入社してくれる確率が想定以上に低いため、組織を維持することも、健全な組織を創りあげることも困難なのだと思います。ただ、健全な組織をつくりあげようと思えば、やはり早い段階で採用へ舵を切る必要性はあると思います。

ABOUT ME
社会保険労務士 養父(ようふ) 真介
福岡生まれ大阪育ち、東京都杉並区在住。◆大学3回(年)生の1998年に社労士資格を独学で取得。◆コネなし・経験なし・僅かな資金で2008年に独立。◆2009年より介護福祉業界に注力。◆2010年に「人の問題解決」に必要な根幹技術となる「アセスメントセンター」という「能力診断技法」と出会い、数百時間にも及ぶ「人を見極める」という機会を得て、多くの組織が抱える悩みの根源を知る。◆その後、その知見を活かし、クライアントの組織で発生するさまざまな「人の問題」への対応方法について具体的な解決手段を提示し、組織を健全に保つ手助けを生業としている。◆社会保険労務士法人Noppo社労士事務所 TEL:03-6454ー6083 ※お電話の場合、まず職員が対応しますので、「ブログを見て問い合わせた」とお声がけ頂けるとスムーズです。
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