一番大事な姿勢は、「肚をくくる」こと。
これしかないように思います。
問題行動の多い人と対峙することは、精神的にかなり負担の大きいものであり、逃げ出したくもなります。
また、「対人業務」であるがゆえに、型はなく、型にはめ込んだ途端に陳腐化してしまうという難しさがあります。
どのように向き合っていくか?
一度、まとまった時間を取って、とにかく話を聞いてあげてください。
「聞く」と言っても、単に聞きだせば良いというものでもなく、あくまでも相手を尊重する姿勢をもったうえで、相手の言葉を受け止めつつ、何をどのように考えているのかを模索する行為です。もし、相手が「聞いてもらった感じがしない」「言ったことが伝わっていない」と感じられたら、それはここでいう「聞いた」ことにはなりません。
問題行動を起こしていて、その都度、注意や指導を行ってきても、その職場で働きたいという意思を持っている人は、「何らかの事情」があるはずです。
注意や指導をして、
「この仕事は自分に合っていないのか・・」
「会社から必要とされていないのかも・・」
と思うような方は、あまり問題にはならないかもしれません。
しかし、注意や指導をしても、伝えた内容に対して一切受け止めることなく、
「俺(私)は悪くない!悪いのは指導方法や会社の制度や仕組みだ!」
「俺(私)は有能だから会社にも貢献している!」
と思い込んでいるような方は、その後の対応で困難さを増すことが予測できます。
多くの人は、承認欲求を満たしてもらいたいと望んでいます。
その望みが叶わず、注意・指導を繰り返し行われていれば、誰しも嫌になります。
にもかかわらず、会社に在職し続けるということは、その欲求に勝る事情があるはずです。
それを、まず聞いて明確に把握していく必要があります。
最も火に油を注ぐ対応は、こちらの意思だけ一方的に告げること
これでは、「人と向き合う」とは言えず、言葉を使った暴力と言い換えても良いでしょうし、双方が感情的になり、まとまる話もまとまらなくなります。
面と向き合って、改めてこちらの意思をきちんと伝えることは大事。でも、相手の意思も受け止めなければなりません。
経営者から「今日に至るまでこちらとしても精一杯、あなたに注意や指導を繰り返してきたけれど、まったく改善する傾向がみられない。もう、これ以上一緒に働くのは厳しいと考えています。」と言われて、ショックを受けない労働者はいないでしょう。
それでも、「辞めない」という選択肢をとる方はいます。
「我慢くらべ」と「日々の組織マネジメント」
辞めない意思を形成している事情が解消されるまで、経営者の忍耐力がもつか、それとも、解雇という大きなリスクを負ってでも、会社から出ていってもらうか・・。
でも、解雇という選択肢をとりたくはないですよね・・。大企業であれば、仕事の種類も多く、配置転換するという手段を選択できるケースもありますが、中小企業にそのような場所があるとは思えません。
いま多くの会社では人手不足です。
人手不足という環境の中、「贅沢は言ってられない」といって、違和感を覚えつつも採用に踏み切ってしまう会社は数多くあります。
そして、問題を抱えながらも、だましだまし雇い続けます。
しかし、だましだまし雇ったツケは必ず払わされます。
そうならないためにも、気になる社員とは10分でも20分でも良いので、きちんと向き合っていくべきだと思います(その都度、退職勧奨をするという意味ではないですよ)。状況によっては、その中で、「自分の居場所はここにはない」と判断して辞めていく方もいるでしょう。もちろん、そうならない方もいます。しかし、面倒で負担の多いこの過程があるから、最終的な決断を伝えるときも、訴訟などの最悪の方向には進まない布石になっていくように思います。
バランス感覚の優れた専門家と付き合い、有用な法的知識も身につけましょう
経営者が法的な知識(退職や解雇の種類、雇用保険の内容など)を身につけておくことも重要です。
インターネットから気軽に情報を入手できる世の中であるため、労働者が「誤った認識」で追及したり、要求をしてくることもあるからです。そのときに下手にうろたえたり、取り繕ったりすることなく、「正しいことは正しい、間違っていることは間違っている」と言えるだけの明確な法的知識は必要です。
退職にまつわる法的知識は多岐にわたってしまうため、インターネットや本から情報を収集するのは本業が忙しいなかで大変なことだと思います。できれば身近な社労士などの専門家(特にバランス感覚の優れた人)に相談するほうが無難でしょう。自分自身で調べたいという方は、Googleなどの検索エンジンで「退職 解雇 種類」と打ち込んで検索してみてください。このブログでも実務に即したものをいずれ書いてみたいと思います。
さいごに
これまでさまざまなケースで、できる限り労使双方が禍根を残すことなく終わることができるように経営者をサポートしてきましたが、労働者と向き合うことを避けて逃げてしまう方は、労働者との関係をこじらせてしまいます。また、会社側の責任を棚にあげて、労働者を一方的に責める方も、労働者の尊厳を著しく傷つけるので、紛争が長期化してしまう傾向があります。
逆に、辛いことから目を背けず、肚をくくり、労働者と真摯に向き合うことができる方は、労使双方にとって、納得できる形ではなかったとしても、何とか収束を図っていくことができるように思います。
労使関係にしても、夫婦関係にしても、納得できる関係を築いていくというのは、本当に難しいですよね・・。