仕事論

仕事で思い悩む新卒社員さんへ~人を雇い入れる経営者には若者の「添え木」となってほしい~

 

大型連休も今週はじめに終わりましたね。新卒で入社したばかりの人の中には、思い描いていた社会人生活とかけ離れていて、現実逃避したい‥という方も出てきているのではないかと思います。

私の若手社員時代といえば、まさに「人生の暗黒時代パートⅡ(パートⅠは高校時代)」。職場で2番目に出会った上司から、強烈なパワハラを受けていました。そのパワハラ上司との付き合いは、新卒で配属された職場の当初の課長が、とある(聞けばドロドロの)理由から「自分の部署に新卒社員を配置してほしい、新卒社員を育てたい」と希望していたにも関わらず、わずか半年で希望退職を申込み、辞めてしまったことからのスタート。

部署立て直しのために配属されたのは、「呑む・打つ・買うをしてこそ営業や!(もはや死語と思いたい‥)」という、私と正反対?の性格の課長でした。

その上司のアクの強さといえば強烈で、「関東人が嫌いな関西人」の典型ではないだろうかと思います。言葉は下町の関西弁、話は長いし声は大きい、理不尽、思い込んだら自説を曲げない‥。今でも覚えている最も部下に言ってはいけないNGワード。それは「養父、お前、新卒やからと言うてな、簡単に辞めさせることがでけへんと思うなよ。子会社に移して、その子会社を潰せばおしまいなんやからな」というセリフ※です。当時の私は、簡単に辞めさせられないから失敗を繰り返していたわけではないのですが、なんかこう、こういう人は捻じ曲げて解釈するのですよね‥。心の奥底で「この人の言っていることは絶対におかしい」とは思っていたものの、当時の私が何を言っても通じる相手ではありませんでした。また、何か言い返しでもすれば、それこそ数倍になって返ってくることが、嫌というほど分かっていました。

※運悪くこのような言葉を吐く上司のもとで働くことになったら、転職を考えましょう!異動を希望するも、それが叶わない状況であれば、精神が病む前に次を探したほうが良いです。一度精神を病んでしまうと回復まで本当に時間が掛かってしまいます。

そんな上司と付き合ったのは「2年と3か月」。

うつ病とまではいかずとも、私もさすがに半分病んでいました。人間、ことごとく否定され、毎週1~2回、1時間以上のカミナリを食らえば当然かもしれません(しかも支店の社員全員がいるフロアで…)。

自宅の部屋には、自分を鼓舞する言葉をお札のごとく四方に張り(誰が見ても引きます)、営業の本を読んだり自己啓発やマーケティングのセミナーに出たりして、「自分の何が問題であるのか」「どうすれば売上を伸ばせるのか」を悶々と考え続けました。常時慢性的な睡眠不足とその睡眠不足による精神の不安定化、居眠り運転は日常茶飯事…もう全てが空回りで、本当に危険な状態。まるで、一寸先の読めない暗闇を歩いているような感覚、どこに光があるのかも分からずに、深海の中を僅かな空気をたよりに歩いているような感覚。そのような感覚で、毎日を過ごしていました。

2年と2か月ほど経ったある日。その上司は私にこう言いました。

「もうお前には言い飽きた、何も話さん」と。

必死に脇目も振らず頑張っていた(と思っていた)なか、言われた言葉でした。帰宅途中、思わず天を仰ぎながら、「もう怒ってくれへんのかぁ、完全に見放されたんやなぁ」と感傷的になって涙を流しました。上司のカミナリに怯え続けていたにも関わらず、めげずに頑張っていたので、この言葉はやはりショックでした。

しかしその翌日、パワハラ上司は昨日のことは素知らぬ風に、全く普通に話をしてきました。「昨日のあれは何やったんや、確か『俺は感情を引きずらんのや』とか言うてたなぁ」などと考えつつ安堵した記憶が、今でも鮮明に残っています。

桜の季節は過ぎ、大型連休もようやく明けましたが、まだ経営者・労働者双方が希望や期待を抱いているでしょう(もう打ち砕かれた方もいるかもしれませんが‥)。

新卒の離職率は厚労省発表の直近の資料で3割強です。今の時代は、残念ながら退職の判断を拙速に行う方も多いと感じます。経営者は若い社員をじっと見守り続ける、労働者は石にかじりついてでもやり抜こうとする…双方に、そんな意志が必要ではなかろうかと思います(ただし、前述のとおり、心無い企業や上司のもとで、心身を擦り減らしてまで頑張る必要は全くありません。)。

まともな企業(組織)で働くことが大前提とはなりますが、手を抜かず、そして諦めず取り組めば、何事にも必ず転機が訪れると私は信じています。ただ、経営者にも労働者にも、必ず「しんどい時」が訪れます。この「しんどい時」に必要なのは、「なぜ、この会社を選んだのか?」「なぜ、この人を選んだのか?」という「意味」ではないでしょうか‥。

★★★(以降は、経営者の方へ)

経営側としては、真剣に慎重に採用活動を行い、「なぜ、この人を選んだのか?」という問いに対する明確な答え(根拠)を持っているのであれば、若手社員をじっと見守ることは比較的たやすいように思います。しんどい時、迷った時に立ち返ることのできる根拠があるからです。さらに、「あの人を選ばず、この人を選ぶ」という判断に至るまでの思考過程の深さが、「その人を選ぶ意味」を強化すると同時に、経営者の忍耐力を形成してくれるように思います。

作家・宮本輝氏は小説『三十光年の星たち』のあとがきに、こんなことを書いています(良い本なので是非読んでみてください)。

「人間には何らかの支えが必要だ。とりわけ若い人は、有形無形の支えを得て、難破船とならずに嵐をくぐり抜ける時期がある。だが、いまのけちくさい世の中は、若者という苗木に対してあまりにも冷淡で、わずかな添え木すら惜しんでいるかに見える」

まさに、昔の私は「添え木」を求めていました。しかし、今思えば、知らぬ間にさまざまな形でさまざまな人が添え木になってくれていたのだと思います。そして私は、縁あってお付き合いいただいている経営者の方々には、丁寧な採用活動の結果、自らが雇い入れた若者の添え木になってほしい、と心から思っています。

経営者が若い社員の添え木となること。それは、その社員が仕事に懸命に取り組むことの「意味」となり、経営者に良い影響として返ってきます。反対に、人の心を蔑ろにした経営者は、その人の心に必ずといっていいほど復讐されてしまいます。

若者の添え木になろう、という気持ちを少しでも持とうとするのであれば、採用だけは疎かにしてはいけません。「なぜ、この人を選んだのか?」という問いに答えられない、そんな安易な判断に基づく足元の覚束ない採用で、選んだ社員を長期的に見守り続け、添え木となる‥そんなことが、現実的に可能でしょうか。

採用で失敗をし続ける会社は、必ず、経営者の採用との向き合い方に課題があります。採用のセミナーに行けば、「期待する人材像を描きましょう」と一般的に言われますが、そうした人材像を明確にする必要性は無いように思います。

要は「一生懸命働く人」を経営者は雇いたいのです。

ほとんどの経営者は「そんな奇特な人は中小企業には来ないよ」とこぼされますが、私の経験知や実体験から判断すると、それは間違いなく誤りです(もちろん、大企業やベンチャーにばかりそういう人材が応募する、というのも全く根拠はありません)。「一生懸命働く人が来るか来ないか」は、もう既に何度かこのブログでもお伝えしていますが、会社の規模云々の問題ではなく、「妥協のない採用で、一生懸命働いてくれる人を選ぶ」という経営者の「覚悟」の問題です。

雇う覚悟、そして雇われる覚悟。

今の時代にはこの覚悟が問われており、労使双方にそうした覚悟がなければ、変化の激しいこの時代を生き抜く組織をつくることは難しいのかもしれません。

ABOUT ME
組織人事コンサルタント・社労士 養父(ようふ) 真介
1977年生まれ。福岡生まれ大阪育ち、東京都在住。◆大学在学中に社会福祉法人で4年間ボランティアをしていたことをキッカケに1998年社労士資格を取得。◆コネなし・経験なし・僅かな資金で2008年に独立。◆2010年に「人の問題解決」に必要な根幹技術となる「アセスメントセンター」に顧客を通じて出会う。◆その後、その知見を活かし、クライアントの組織で発生するさまざまな「人の問題」への対応方法について具体的な解決手段を提示し、組織を健全に保つ手助けを生業としている。
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