助成金

新型コロナウィルスの影響に伴って特例措置が実施された「雇用調整助成金」について

新型コロナウィルスの影響を受けて、売上が急減したり、徐々に減少している会社が増えてきています。この状況を踏まえ政府が「雇用調整助成金」の特例措置を矢継ぎ早に発令していますが、誤解も多く、過去にはかなりの不正受給も発生している助成金です。この助成金の要件や特例措置の内容などを「中小企業」と休業」に絞って解説したいと思います(ただ、一部大企業についても記載をしています)。出向や教育訓練を盛り込むと分かりづらくなるため、こちらでは省略します。

※内容の改定が頻繁に実施されているため、リンクが見れないことがあります。逐次チェックはしていますが、リンクが切れているときはご容赦ください。

※2020.04.26 リンク切れの修正と更なる拡充について掲載しました。

※4/1~6/30の特例措置については、ガイドブック等が更新されましたので以下の厚労省サイトからもご確認ください。

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/pageL07.html

 

解説の前に…(コロナ対策の融資制度も視野に入れて下さい)

今回、雇用調整助成金の特例措置が設けられたことは良いのですが、助成金はすぐに受給できるものではありません。おそらくキャリアアップ助成金等のように審査に半年も掛かる・・ということはないと思いますが、それでも数ヶ月(最低でも3ケ月程度)は必要かと思います。例えば、4月~5月に休業した分を6月に支給申請も含めて提出する場合、口座に入金されるのが、8月か9月頃になってしまうわけです。そのため、その間の資金繰りが重要になります。このことを踏まえて、政府系や民間金融機関の融資も同時並行で検討するようにしてください。

⇒4/1から6/30の特例措置の拡大が実施されてからは、「支給まで1ヶ月」と厚生労働大臣が明言したため、審査をする現場の方々は必死に頑張ってくれるかと思います。

ただ・・・

労働局もハローワークも大混雑している中で(都市部は特に)、相談をしようにも窓口がパンク状態になっている状況を鑑みると1ヶ月で本当に支給してくれるのかという点については半信半疑でいたほうが良いとは思います。期待をしつつもやはり、融資を同時並行で受けておかないと現金が枯渇してしまうことになります。この点については十分に注意してください。

 

 

「雇用調整助成金」とは?

景気の後退など、経済上の理由で経営環境が悪化し、雇用調整を行わざるを得ない会社が、労働者に対して「休業」を行い、労働者の雇用を守った場合に支給される助成金です。

労基法上、使用者が法的に責任を負わなければならない「休業」の場合には、休業期間中の休業手当(平均賃金の100分の60以上)を支払わなければなりません。雇用調整助成金はこの使用者が負担する休業手当の一部を補填してくれる助成金です。

そもそも制約の多い(要件のハードルが高い)助成金ですが、新型コロナウィルスによる影響が社会の広範囲にわたり、長期化することが懸念されているため、この要件を緩和する「特例措置」が設けられています。

 

どのような要件を満たさなければならないのか?

主な要件は以下のとおりです。また、特例措置の内容を⇒⇒⇒で示します。

☑「最近3か月」の生産量、売上高などの生産指標が前年同期と比べて10%以上減少していること。また、原則として、初回の休業計画届を提出する月の「前月」の対前年比で確認します。

⇒⇒⇒「最近3か月」→「最近1か月」

⇒⇒⇒前年同期がない事業所設置後(雇用保険適用事業所として設置の届出をした時点)から1年未満の会社も対象となります。ただし、令和元年12月の生産指標は必要です。

☑休業の実施期間が対象期間(1年間※)内にあること。※雇用調整の初日起算

☑休業期間中の休業手当の額が、労働基準法第26条(平均賃金の6割以上)に違反していないこと。

☑雇用保険被保険者数及び受け入れている派遣労働者数の最近3か月間の月平均値の雇用指標が前年同期と比べ、一定規模以上(中小企業の場合は10%を超えてかつ4人以上)増加していないこと。

⇒⇒⇒要件撤廃

☑実施する休業が労使協定に基づくものであること(計画届とともに協定書の提出が必要)。休業すれば対象となるのではなく、あくまでも事前に労使協定を締結しなければなりません。

☑過去に雇用調整助成金(以下、雇調金という)又は中小企業緊急雇用安定助成金(以下、中安金という)の支給を受けたことがある事業主が新たに対象期間を設定する場合、直前の対象期間の満了の日の翌日から起算して一年を超えていること(1年のクーリング期間)。

⇒⇒⇒(3月中旬より追加予定)1年のクーリング期間が撤廃され、過去に雇調金や中安金を受給したことがあっても、支給限度日数(休業の初日から1年の間に最大100日分、3年の間に最大150日分)までの受給が可能になります。

 

支給対象となる従業員とは?

雇っている人なら誰でも対象になるわけではありません。雇用保険に加入している従業員のみが対象となります。ただ、下記の方は対象外です。

・雇用された期間が6か月未満の方

⇒⇒⇒(3月中旬より追加予定)新規学卒者など雇用された期間が6か月未満の従業員も対象へ。

・解雇予告された方

・退職願を提出した方

・退職勧奨に応じた方

 

いくら受給できる(助成される)のか?

わかりづらい点の1つですが、従業員の給与の2/3(中小企業)が助成されるわけでも、休業手当の2/3が助成されるわけでもありません。以下の計算により求めた「平均賃金額」を元に、労使協定で定めた支払い率(60%~100%)を掛けた上で、基準賃金額を算出し、中小企業の助成率(2/3)を掛けた金額が助成されます。

⇒⇒⇒【拡充案】緊急事態宣言を発出して活動の自粛を要請している地域のみ(現時点では北海道のみ)「2/3」から「4/5」へ

◆平均賃金額の計算方法:前年度1年間の雇用保険の保険料の算定基礎となる賃金総額÷(前年度1年間の1か月平均の雇用保険被保険者数×前年度の年間所定労働日数)

事前にいくら受給できるのかを確認したい方は、厚労省のHP(以下)から様式第5号(2)を用いて、シミュレーションしてみてください。

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000080400.html

会社都合で労働者を休業させた場合、労基法上の休業手当(平均賃金の6割以上)を支払う義務があります。最低額の6割とした場合、上記「平均賃金額」に6割を掛けた上で、2/3が支給されることになります。例えば、会社によっては社員の生活を考えて満額の10割を支給することもあるでしょう。その際、雇用調整助成金から助成される額も、平均賃金額そのものに2/3を掛けることになり、助成される額も増えます。※但し、上限額は8,330円です(令和2年3月1日現在)。

※休業の初日から1年の間に最大100日分、3年の間に最大150日分が助成されます。

⇒⇒⇒緊急事態宣言が出された東京、神奈川、千葉などは、4/1~6/30の期間に加えて、1年100日、3年150日助成されることになります。

休業を行った判定基礎期間内に、その対象者が時間外労働(所定外・法定外労働)をしていた場合、時間外労働時間相当分が助成額から差し引かれることになります(残業相殺ルール)。休業を実施したものの、そのしわ寄せで残業が増えるようなことがないように計画的な休業を実施しましょう。

⇒⇒⇒この取扱いは停止中です。

 

新型コロナウィルスに関連する特例措置関係

緩和措置が何度も発出されると分かりづらくなるため、自分のためにも備忘録的に残しておきます。すでに混乱気味ですが・・。

⇒リンクが切れてしまうので、一部必要な資料のアップに切り替えます。

 

新型コロナウイルス感染症の影響に伴う雇用調整助成金の特例を実施(R2.2.14)

この時点では特例の対象となる事業主が限定されていました。

https://www.mhlw.go.jp/content/11603000/000595853.pdf

 

 

新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえ雇用調整助成金の特例を追加実施します(R2.3.25)

休業等の初日が、令和2年1月24日から令和2年7月23日までの場合に適用します。

① 新規学卒採用者など、雇用保険被保険者として継続して雇用された期間が6か月未満の労働者についても助成対象とします。

② 過去に雇用調整助成金を受給したことがある事業主について、
ア 前回の支給対象期間の満了日から1年を経過していなくても助成対象とし、
イ 過去の受給日数にかかわらず、今回の特例の対象となった休業等の支給限度日数までの受給を可能とします(支給限度日数から過去の受給日数を差し引きません)。

https://www.mhlw.go.jp/content/000612660.pdf

 

 

 

新型コロナウイルス感染症にかかる雇用調整助成金の特例措置の拡大(2020.03.28発表) ※2020.04.09更新

ポイントは以下になります。
・適用される期間は、4月1日~6月30日まで

・感染防止拡大のため、この期間中は「全国で」特例措置を実施

・新型コロナウィルス感染症の影響を受ける事業主(全業種)

生産指標要件は、1か月5%以上低下

・雇用保険被保険者ではない労働者の協業も助成金の対象となる

助成率 中小企業(4/5)、大企業(2/3)
 ※解雇等を行わない場合は、中小企業(9/10)、大企業(3/4)

計画届の事後提出を認める(1月24日~6月30日まで

・クーリング期間の撤廃

・被保険者期間要件の撤廃(6か月未満の被保険者でも対象となる→新入社員など)

・支給限度日数(1年100日、3年150日+上記対象期間)

短時間一斉休業の要件緩和

残業相殺の停止

・教育訓練の内容に応じて加算額を引き上げる措置

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/pageL07.html

 

令和2年4月8日以降の更なる拡充について

令和2年4月8日以降において、助成率の更なる拡充が行われる予定です。詳細は5月上旬ごろを目途にとあります。労働局やハローワークに問い合わせをしても報道発表以外の情報を得ることはできませんので、ガイドブック、支給要領、FAQが更新されるのを待ちましょう。

※対象労働者1人1日あたり8,330円の上限は変わっていません。

雇用調整助成金の申請手続の更なる簡素化について(令和2年5月6日先行公表)

助成額算定方法の簡略化が次のように行われる予定です。詳細は後日公表されることになります。

1.小規模の事業主(概ね従業員20人以下)については、「実際の休業手当額」を用いて、助成額を算定できるようにします。
※ 「実際に支払った休業手当額」×「助成率」=「助成額」とします。

2.小規模の事業主以外の事業主についても、助成額を算定する際に用いる「平均賃金額」の算定方法を大幅に簡素化します。

(1) 「労働保険確定保険料申告書」だけでなく、「源泉所得税」の納付書を用いて1人当たり平均賃金を算定できることとします。
※ 源泉所得税の納付書における俸給、給料等の「支給額」及び「人員」の数を活用し、1人当たり平均賃金(「支給額」÷「人員」)を算出します。

(2) 「所定労働日数」を休業実施前の任意の1か月をもとに算定できることとします。

https://www.mhlw.go.jp/stf/press1401_202005061030.html

 

 

よくある質問と誤解されがちな点

短時間休業は認められますか?

認められていはいますが、「1時間以上、かつ、従業員全員が一斉に休業する」必要があります。一部の従業員が短時間休業をしても対象外となってしまいますので、注意して下さい。

⇒2020年4月1日~以下のとおり要件が緩和されました。さらに5月1日の支給要領にて大幅に緩和されています。

 

全員休業させる必要がありますか?

一部の従業員を休業させる場合も対象となります。一部門の売上のみ急減して仕事がないという場合もあるでしょうから、その売上が急減した部門の従業員だけ休業させても対象となります。

 

助成される金額は従業員ごとに異なるのか?

先述の「いくら支給されるのか?」でも解説したとおり、前年度1年間の雇用保険の保険料の算定基礎となる賃金総額÷(前年度1年間の1か月平均の雇用保険被保険者数×前年度の年間所定労働日数)で算出した平均賃金額を元に支給されるため、一人当たりの単価は同一になります。

 

さいごに~その1~(2020年3月8日)

ここ1~2週間の経過で新型コロナウィルスの封じ込めがうまくいけば、雇用調整助成金の緩和措置も収束していくかと思います。ただ、長期化すれば、おそらく今後も緊急の緩和措置が追加で実施されるかもしれません・・。新型コロナウィルスの感染拡大が何とか収束していくことを願うばかりですが、景気への悪影響が長引くことも視野に入れて経営していかなければならない局面には入っているかと思います。

 

さいごに~その2~(2020年3月10日)

新型コロナウイルス感染症対策専門家会議 「新型コロナウイルス感染症対策の見解」2020 年3月9日の中では、

今回、国内での流行をいったん抑制できたとしても、しばらくは、いつ再流行してもおかしくない状況が続くと見込まれます。また、世界的な流行が進展していることから、国外から感染が持ち込まれる事例も、今後、繰り返されるものと予想されます。

と記載があり、

3月10日に行われた専門家会議のメンバーからも

「新型コロナウイルスはインフルエンザのように暖かくなると消えてしまうものではなく、半年、1年を超えて対応を続けなければならないと考えている。ウイルスの特徴を理解し感染を広げないためにどのように行動を変えていけばよいのか、多くの人に考えてもらう必要がある」

という発言がありました。

このことを考慮すれば、長期化(最悪)を想定して動いていかなければ、「もしも」に備えられないかもしれません。現実逃避したくなるような話ではありますが、現実に起こる前に検討しておいたほうが良いと思います。

支給申請書の作成を考えている方へ

GW中も相次いで変更があるため、支給申請自体は落ち着くまで様子見したら良いかと思います。今やることは、

①計画書の準備(支給申請書の作成と同時でも問題なしです)

②給与明細や賃金台帳への休業手当や休業控除の明示

③出勤簿やタイムカードへの表記(「休業」や「短時間休業」)

④雇用保険への加入漏れがあればその手続き

私自身、情報は追い続けますが、支給申請関係には手を付けず、②と③の確認に留め、5月の下旬頃に着手していくことになるかと思います。

ABOUT ME
社会保険労務士 養父(ようふ) 真介
1977年生まれ。福岡生まれ大阪育ち、東京都杉並区在住。◆大学在学中の1998年に社労士資格を取得。◆コネなし・経験なし・僅かな資金で2008年に独立。◆2010年に「人の問題解決」に必要な根幹技術となる「アセスメントセンター」という「能力診断技法」の専門家を擁する概念化能力開発研究所の奥山氏と出会い、数百時間にも及ぶ「人を見極める」という機会を得て、多くの組織が抱える悩みの根源を知る。◆その後、その知見を活かし、クライアントの組織で発生するさまざまな「人の問題」への対応方法について具体的な解決手段を提示し、組織を健全に保つ手助けを生業としている。