助成金

人材確保等支援助成金(雇用管理制度助成コース)の「健康づくり制度」導入について

正社員数が少なく、正社員への福利厚生を充実させたい会社におススメの助成金です。 

<助成金の概要>

ひとりでも正社員を雇用している会社が、その正社員のために、がん検診や歯周疾患検診などの健康づくり制度を導入し、離職率の低下が図られた場合に支給される助成金です。ざっくりいうと、正社員数が少なくて、その正社員のために福利厚生を充実させることに拒否反応がなく、人間関係も良好な会社なら受給できる確率は高いといえます。

 <助成額>

57万円(一時金かつ定額)

※生産性要件を満たせば72万円←こちらは余り期待しないほうが良いでしょう。

<申請するかどうかのポイント>

この助成金に対して、以下の2点をクリアしている会社はハードルが無いもしくは低い会社と言えるかと思います。

✅福利厚生の充実は大歓迎で、健康づくり制度(歯周疾患検診などを毎年1回正社員に受診させる)という制度を導入しても、会社として何ら困らない(負担と感じない)

✅正社員が少なく、人間関係が良好である(組織が安定している)

➡制度を導入すれば受給できるという類の助成金ではなく、制度導入後に助成金の趣旨となる従業員(正確には雇用保険一般被保険者)の離職率低下が図られたら支給されるという助成金であるため、人間関係が悪い職場であれば、ゴールまで辿り着けないでしょう。

<申請に当たっての要件チェック>

すべてに該当すれば、おそらく問題なく申請可能です。

✅雇用保険に加入している(少なくても正社員が1人以上いればOK)

✅社会保険に加入していて、社会保険料も適正に支払っている(適用事業所の場合)

✅法令に定められた定期健康診断等を実施していて、領収書等を保管している

✅約6ヵ月前から解雇等をしておらず、かつ、計画期間内も解雇等をする見込みはない(このあとにでてくる「評価時離職率算定期間」においても離職者要件があるため、会社都合の退職には注意が必要です)

✅健康づくり制度として、以下のいずれか1つ以上の項目を新たに導入して、正社員全員を対象に1項目以上を受診させることができる

□胃がん検診 □子宮がん検診 □肺がん検診 □乳がん検診
□大腸がん検診 □歯周疾患検診 □骨粗鬆症検診 □腰痛健康診断
おススメは、歯周疾患検診です。「予防歯科」は健康を維持するためにも本当に大切です。

✅上記の医療機関への受診費用の半額以上を負担できる(できれば全額負担してあげてください)

✅上記制度を就業規則に盛り込み、今後年1回以上実施することができる(申請時に求められるのは「計画期間内」と「その後1年間」の計2回)です。

✅離職率を目標値以上に低下させることができる

ここが一番の難所です。過去の離職率が高くても、いまは比較的組織が安定しているという会社はクリアしやすいでしょうし、少数精鋭(正社員1名~)で運営していて、人間関係も良好!ということであれば、同じくクリアできる確率は高いといえます。

★離職率の求め方は以下のとおりです。

(※1)小数点第2位を四捨五入します。
(※2)離職による雇用保険一般被保険者数…定年退職、重責解雇、役員昇格及び労働者の個人的な事情による労働時間の短縮等による者は含みません。

これだけだと分かりづらいと思いますので、例を出して説明します。

2021年1月1日に制度を導入するために、11月27日に雇用管理制度整備計画期間を3カ月(2021.1.1~2021.3.31)として計画書を提出した場合、離職率を求める「所定の期間」は、

・計画時離職率算定期間 2020.11.1~2021.10.31
・評価時離職率算定期間 2021.4.1~2022.3.31

となります。

低下させる離職率ポイント(目標値)は、対象事業所における雇用保険一般被保険者の人数規模に応じて変わります。

※ただし、評価時離職率が30%以下となっていることが必要(離職率が高い会社のほうが余りにも有利とならないような条件設定だと思います)
※※人数規模区分は、評価時離職率算定期間の初日時点の人数規模区分が適用

例えば、雇用保険一般被保険者の人数規模が「1~9人」で、計画時離職率が①50%②30%③0%であった場合の目標値はどうなるかというと、

①計画時離職率 50% ➡ 評価時離職率30%以下とすることが必要
②計画時離職率 30% ➡ 評価時離職率15%以下とすることが必要
③計画時離職率  0% ➡ 評価時離職率 0%とすることが必要
となります。

さらに具体的にいうと、ある会社(A社)の評価時離職率算定期間の初日の人数が9人で、その後1年間に2人辞めてしまった場合、22.2%(少数点第2位を四捨五入)となるので、A社の計画時離職率が50%であった場合は目標値をクリアするということになります。

★新規創業したばかりで計画時離職率を算出できない場合は、評価時離職率を0%(要は1名でも退職者を出さないこと)とすることを目標とします。

★雇用管理制度整備計画期間に雇用保険を喪失した方については離職率に影響しません。離職率は、あくまでも計画時離職率算定期間と評価時離職率算定期間で判断することになります。

<申請の流れ>

★申請準備1~2か月

 

 

★最低でも計画開始日(制度を導入する月の初日)の1か月前までに計画の提出
※たとえば、2021年1月1日に制度導入するのであれば、2020年11月末までに計画届を本社所在地を管轄する労働局へ提出(東京の場合はハローワーク)

(例)
計画開始日 2/1 ➡ 12/31までに書類を作成して届出
計画開始日 3/1 ➡ 1/31までに書類を作成して届出
計画開始日 4/1 ➡ 2/28までに書類を作成して届出

★労働局からの認定通知書の発行
※計画開始日が近づいても労働局から認定に関する連絡が無い場合は、労働局へ問い合わせするようにしてください。

★制度を導入する
※パート等含め常時10人以上の労働者がいる会社は労基署への届出必須

★計画期間に、計画どおりに制度を実施 
※対象はいわゆる正社員です。

★算定期間(計画期間終了後12か月間)終了後2か月以内に「支給申請」

★助成金を受給 57万円(生産性要件を満たせば72万円)

<注意点>

★計画期間(3ヵ月~1年)➡評価時離職率算定期間(1年間)➡2か月以内に支給申請➡数か月後(最低でも約3か月~6か月後)に受給というプロセスを経るので、とにかく長期間組織を健全に維持しましょう!

★健康づくり制度の中の「歯周疾患検診」はおススメの検診ではありますが、すべての歯科医院が提供しているサービスではないため、歯科医院に電話して歯周疾患検診を実施しているかどうかを確認する必要があります。また、歯周疾患検診と通常の歯科検診を勘違いされる方もいるので注意が必要です。

★健康づくり制度の対象者は「正社員」となり、離職率の算定は「雇用保険一般被保険者」となるのが、混乱を招きやすいですね。

<リーフレットと支給要領>

詳細を確認するときは、必ず該当する年度のリーフレットや支給要領を確認するようにしましょう。年度によって微妙に変更される箇所があります。

令和2年4月1日版 人材確保等支援助成金 リーフレット

令和2年4月1日版 人材確保等支援助成金 支給要領

リングが切れているときは、厚労省のサイトを直接確認してください。

<さいごに>

組織を安定させることは非常に難しいことですし、経営者の資質が問われるとも言えます。ただ、離職は社員の個人的な事情により発生することも多いので、コントロールするのは非常に難しいのが現実です。受給までの道のりはかなり険しいと言えますが、健全な経営者が運営する健全な会社にこそ、このような助成金を受給してもらいたいですね。

ABOUT ME
社会保険労務士 養父(ようふ) 真介
福岡生まれ大阪育ち、東京都杉並区在住。◆大学在学中の1998年に社労士資格を取得。◆コネなし・経験なし・僅かな資金で2008年に独立。◆2010年に「人の問題解決」に必要な根幹技術となる「アセスメントセンター」という「能力診断技法」の専門家を擁する概念化能力開発研究所の奥山氏と出会い、数百時間にも及ぶ「人を見極める」という機会を得て、多くの組織が抱える悩みの根源を知る。◆その後、その知見を活かし、クライアントの組織で発生するさまざまな「人の問題」への対応方法について具体的な解決手段を提示し、組織を健全に保つ手助けを生業としている。
こちらの記事もおすすめ!