社会保険・労働保険関係

厚生年金保険料等の納付猶予の特例について

社会保険料、特に厚生年金や健康保険の保険料の負担は平常時でも重いものがあり、そこにこの新型コロナウィルスの影響が重なると、本当に資金繰りが厳しくなっている事業主の方も多いのではないかと思います。

以前からも厚生年金保険料等の納付猶予制度はありましたが、担保の提供等の要件があり、余程切羽詰まったことが無い限り使わないよね・・というものでした。今回公表された「特例」は、新型コロナウィルス感染症の影響を受けた事業主の方が数多く該当する内容になっているかと思いますので、事業や雇用の維持のために是非活用してください。

あくまでも「申請」をしなければ、この特例を活用することはできません。また、「猶予」であって、「免除」ではないので、その点は「いつかは返済しなければならない融資」と同じです。とはいえ、融資の相談や実行にも時間が掛かっているような状況であれば、納付猶予の特例が与える影響も大きいですよね。

対象となる事業所

次の①から④の要件をすべて満たす事業所が対象となります。どの要件も新型コロナウィルスの影響を受けている事業所であれば、当てはまるのではないかと思います。

令和2年2月以降の任意の期間(1か月以上)において、事業等に係る収入が前年同期に比べて「概ね」 20%以上減少していること(収入の減少が 20%に満たない場合は、管轄の年金事務所にご相談ください。)
②その相当な収入の減少等が、新型コロナウイルス感染症及びそのまん延防止のための措置の影響によるものであること
③「一時に納付することが困難※」であると認められる保険料等があること

※納付すべき保険料等を一時に納付する資金がないこと、または納付すべき保険料等を事業の継続のために必要な少なくとも今後6か月間の運転資金に充てた場合に保険料等を納付する資金がないことを指します。

④指定期限(毎月の納期限からおおよそ 25 日後※)までに申請がされたこと(やむを得ない理由がある場合を除く)

※新型コロナ特例法の施行日(令和2年4月30日)から2か月を経過する日(6月30日)までは、指定期限後であっても申請することが可能です。

「指定期限」とは?

毎月の納付期限から「おおよそ 25 日後」になります。月々の「指定期限」については、納付期限までに保険料等の納付がない場合に送付される「督促状」に記載されています。

(例)

R2年4月分の保険料等納期限・・・5月31日 ※休日の場合は翌営業日
督 促 状・・・・・・・・・・・6月15日頃発送(指定期限が明記)
指 定 期 限・・・・・・・・・6月25日頃(納期限から凡そ25日後)

対象となる厚生年金保険料等

令和2年2月1日から令和3年1月 31 日までに納期限が到来する厚生年金保険料等が対象となります。

・上記の期間のうち、既に納期限が過ぎている厚生年金保険料等(他の猶予を受けているものを含む)についても、遡ってこの特例を利用できます。

※令和2年2月1日から令和2年4月30日(特例施行日)までの間に納期限が到来している厚生年金保険料等(令和2年1月分から3月分)は、もう過ぎてるんじゃないの・・・?と思ってしまいますが、令和2年6月30日までの申請により遡って特例を利用できます。ただ・・、既に納付済みである場合、返還されるわけではありません。

「社会保険料の納付期限」とは?

社会保険料の納付期限は、「翌月の末日※」です。

※翌月の末日が土・日・祝日に当たるときは翌営業日

事業所へ翌月の20日頃に「保険料納入告知書」が送付され、その月の末日が納付期限となります。例えば、4月分の社会保険料は、5月20日頃に「保険料納入告知書」が送付され、6月1日(2020年5月31日は日曜日であるため)が納付期限となります。

猶予期間

納付の猶予(特例)を受けることができる期間は、猶予を受ける保険料等ごとに納期限の翌日から1年間です。

申請のための書類

納付の猶予(特例)を申請する場合は、以下の”根拠となる書類”等をもとに「納付の猶予(特例)申請書」を作成します。
※ 管轄の年金事務所へ郵送で申請可能です。
※ 申請書は日本年金機構ホームページからダウンロードできます。
https://www.nenkin.go.jp/oshirase/topics/2020/20200501.html

【申請書の記載にあたり根拠となる書類】※申請から2年間保管してください。
■コロナウイルス感染症等の影響による事業収入の減少等について
(例)売上帳、現金出納帳、預金通帳の写しなど
■収入及び支出の状況等について
(例)仮決算書(将来見込)、資金繰表(試算表)など
■現金・預貯金残高について
(例)預金通帳の写し、固定資産台帳、不動産登記簿謄本など

※ また、国税、地方税、労働保険料等について、納付猶予の特例が許可されている場合、既に許可を受けている国税・地方税・労働保険料等に係る猶予申請書及び猶予許可通知書のコピーを添付することにより、「納付の猶予(特例)申請書」の「3 猶予額の計算」の記載を省略できます。

申請のための記載例

以下の「申請の手引き」の7ページと8ページを参考に記載してください。

難しい内容ではないかと思いますが、「3 猶予額の計算」は悩まれるかもしれません。

手引きには、「根拠となる書類を確認させていただく場合等がありますが、書類の準備が難しい場合は、職員が聞き取りによりお伺いしますので、まずは、「納付の猶予(特例)申請書」のみを管轄の年金事務所に提出いただいて差し支えありません。」と記載されています。

これは資金繰りに窮している事業所さんに申請書の届出(郵送)をまず優先して送付してもらいたいという国からの意思表示かと思いますので、手元に”根拠となる書類”を準備しつつ、申請書の送付を優先して良いかと思います。

https://www.nenkin.go.jp/oshirase/topics/2020/20200501.files/02.pdf

※申請は原則として、猶予を受けたい保険料等の指定期限までとなりますが、6月30日までは遡って申請できます。

その他(税金関係について)

詳細は専門外なのでお伝えできませんが、ご参考までにURLだけでも。

国税の納付猶予の特例について

https://www.nta.go.jp/taxes/nozei/nofu_konnan.htm

地方税の納付猶予の特例について

https://www.soumu.go.jp/menu_kyotsuu/important/kinkyu02_000399.html

 

さいごに(労働保険料等の納付猶予の特例もあります)

労働保険料等の納付猶予の特例についても公表されていますが、厚生年金保険料等のほうがおそらく優先度が高いかと思いますので、先にこちらをアップします。ただ、労働保険料等の納付猶予の特例についても似たような内容です。厚生年金保険料等について、先に特例猶予が許可されれば記載事項も省略できて、より申請もしやすくなります。

 

 

ABOUT ME
社会保険労務士 養父(ようふ) 真介
1977年生まれ。福岡生まれ大阪育ち、東京都杉並区在住。◆大学在学中の1998年に社労士資格を取得。◆コネなし・経験なし・僅かな資金で2008年に独立。◆2010年に「人の問題解決」に必要な根幹技術となる「アセスメントセンター」という「能力診断技法」の専門家を擁する概念化能力開発研究所の奥山氏と出会い、数百時間にも及ぶ「人を見極める」という機会を得て、多くの組織が抱える悩みの根源を知る。◆その後、その知見を活かし、クライアントの組織で発生するさまざまな「人の問題」への対応方法について具体的な解決手段を提示し、組織を健全に保つ手助けを生業としている。