多くの経営者は、起業してから、さまざまなことを学んでいきます。
マーケティング、営業、経理、財務、マネジメント、労務などなど。
社労士を十数年やっていて思うのは、ほとんどの分野で専門家が中小企業を支援しているにも係わらず、採用活動における「選考手法」の分野だけは「自己流」、もしくは、身近な経営者仲間や顧問税理士等に話を聞いただけで対応している会社があまりにも多いということです。
特に小規模零細企業は、年にひとりでも採用すれば良いぐらいなので、そのような慣れない採用活動をするにあたって、見よう見まねで実施しているのが現実ではないでしょうか。
この「採用活動」というのは、会社を継続し成長させるにあたって、「最も重視すべき経営活動」です。ある意味、「会社の行く末を決めるような一手」と言っても言い過ぎにはならないでしょう。
メーカーが生産性を上げる機械などの設備投資をするときに、「数百万」なり「数千万」の投資を実行しますが、採用活動もそれと同等かそれ以上の投資活動です。
「数百万」なり「数千万」のお金を使うとなったら、余程のことがない限り、そのお金を無駄にしないためにもとことん調べ尽くしますよね。
でも、こと採用となると、信じられないくらい無防備になります。どの会社も。
機械設備のスペック調査等と比較しづらい難しさが、採用にあるのは当然のことですが、たった数回あっただけ、それも1時間前後話しただけ、もしくは、何かお題を与えて書いてもらっただけ・・。
そんなぐらいで決めていませんか?
履歴書送付 → 一次面接 → 最終面接という流れだったり、
下手すると、履歴書送付 → 最終面接だったり。
中には適性検査を実施している会社もあるでしょう。
でも、そのプロセスで本当にその人のことがわかっていますか?
「実際はよくわかっていない・・」と腹の底では感じているから、当初の契約書を3か月程度の有期労働契約にしたり、就業規則には「試用期間」を設けていたりするのではないでしょうか?その試用期間※が有効に活用できるかどうかは別として・・。
※試用期間中の解雇は、通常の解雇より少しハードルが低いだけであり、適切に解雇することが困難であることに変わりはありません。
もし、会社が(組織が)うまくいっていないなら、また、入社した人が活躍してくれる確率が低いなら、「選考手法そのもの」を変えていかなければいけません。そして、「人の見極め方」をプロフェッショナルから学ぶべきでしょう。素人が寄り集まっても、プロフェッショナルになりきれない分野があるということを肝に銘じておかなければ、取り返しのつかない採用をする可能性さえあるのです。
今年も早期退職者のご相談を受けていますが、会社に問題がある場合を除き、やはり、何が原因かと言えば、間違いなく「選考手法」に問題があります。そして、それは採用した会社だけが不幸になるのではなく、採用された人も不幸になるということです。
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「多くの日本企業、特に、社員一人ひとりの負荷が高くなり、マルチタスクにならざるを得ない小規模企業や零細企業の経営者が採用への意識を変えること」
そして「採用への意識を変えるため、本物のプロフェッショナルから技術を習得すること」
それが、会社を根本から変えていくターニングポイントになります。
早まっても、会社が抱える問題の本丸から目を逸らし、会社のルールを強化することや、研修や評価制度に依存して、問題を解決しようと試みてはいけません。ルール作りがダメ、研修や評価制度がダメというわけではなく、それぞれが果たす役割の本質をきちんと把握して取り組むべきだということです。失敗から学ぶことが多いのも事実ですが、私が実際に手痛い失敗をした経験からすると、ルールや制度が組織の問題を根本から解決する鍵になったことはありません。
採用への取り組み方を変えようと舵を切ることができる経営者は、現実的にはごく僅かです。
だからこそ、踏み込めた経営者、覚悟を決めて選考方法を大きく見直すことのできる経営者は、「人の行く裏に道あり花の山」という格言が示すとおり、いわゆる「自ら考えて動ける人=生産性の高い人」に必ず巡り合えるのだと思います。