失業等給付(いわゆる失業保険)の受給資格を得るために必要な被保険者期間の算定方法が変わります。
今後の離職票作成に関わる重要なことなので、どのようなケースで注意が必要かを認識しておきましょう!
まず、月11日以上は確実に働いている雇用保険被保険者の離職票の作成は法改正後も全く問題なしです。
でも、ときどき発生しますよね。週平均の労働時間が20時間前後の人。
週20時間以上は働く契約にしているけど、
「祝日等の関係で月11日以上の出勤日を退職前に確保できなかった月があり、失業等給付の受給資格を得るために必要な被保険者期間が不足している人」
の離職票の作成には注意が必要です。
あと、まだあまり検証できていませんが、正社員であっても入社1年未満の人の離職票作成時も注意が必要かと思います。
雇用保険被保険者となる要件
次の ①と② のいずれにも該当するときは、雇用保険の被保険者となります。
①31日以上引き続き雇用されることが見込まれる者であること。
②1週間の所定労働時間が 20 時間以上であること。
失業等給付(求職者給付)の受給資格を得るためには?
雇用保険に加入していた方が、離職をした日以前の2年間に、「被保険者期間」が通算して12か月以上あることが必要です。
また、特定受給資格者※や特定理由離職者※※は、離職の日以前1年間に、「6か月以上」あることが必要です。
法改正前
雇用保険の被保険者であった期間のうち、すべての期間が算定されるという制度ではありません。
離職日から1か月ごとに区切っていった期間に賃金支払いの基礎となった日数(賃金支払基礎日数)が「11日以上ある月」を1か月と計算します。
つまり、法改正前は「10日以下の月」は1か月として計算されなかったということです(上記イメージには計算されなかった月はありません)。
上記イメージ(就職した月)のように離職日から1か月ごとに区切ることにより1か月未満の期間が生じることがあります。
その1か月未満の期間の日数が「15日以上」あり、かつ、その期間内に賃金支払基礎日数が11日以上あれば、その期間を被保険者期間の2分の1か月(0.5か月)として計算します。
また、令和2年8月1日以降は、離職日以前の2年間に賃金支払基礎日数の11日以上の月が12か月未満の場合は、賃金支払いの基礎となった時間数が80時間以上あるときに2分の1か月(0.5か月)として計算します。
法改正「前」の算定されない例
1日8時間労働を週2日と週3日で組み合わせ、1か月の所定労働時間が88時間と定められている労働者がいたとします。
所定労働時間が1か月単位で定められている場合は、1か月の労働時間に52 分の12を乗じて得た時間を一週間の所定労働時間とするため、
(8時間×11日)×12/52
➡週所定労働時間20.3時間となり、この場合、一週間の所定労働時間が20時間以上であるため、被保険者となります。
しかし、加入することになったのは良いものの、契約上、賃金支払基礎日数が11日前後をウロウロすることになるため、退職日によっては計算されない月も発生します。
たとえば、以下のカレンダーで示すような、被保険者が11月16日に退職した場合です。「期間①」は賃金の支払いの基礎となった日数が11日未満(①~⑩の「10日」)であるため、法改正前であれば、被保険者期間に計算されないこととなります。
法改正後
離職日から1か月ごとに区切っていった期間に、
賃金支払基礎日数が11日以上ある月、
または、賃金支払基礎日数となった労働時間数が80時間以上ある月
を1か月として計算できるようになります。
つまり、改正前の要件に上記の太字部分が加わったことで、計算される月が増える可能性があるということです。ただ、今までどおり11日以上ある月で受給資格が得られるなら、この要件を加味する必要はありません。
※雇用保険法第14条第3項
離職票の書き方
令和2年8月1日以降は、
「⑨欄」「⑪欄」に記載する賃金支払基礎日数が10日以下の期間については、
その期間における賃金支払いの基礎となった労働時間数を「⑬欄」に記載します。
育児休業給付について
育児休業給付は、
「育児休業を開始した日前2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上ある月が通算して12か月以上あること」
が支給要件になっています。
こちらについても、
「育児休業開始日が令和2年8月1日以降」であって、育児休業を開始した日の前2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上の月が12か月ない場合は、完全月で賃金の支払の基礎となった時間数が80時間以上の月を1か月として計算できるようになります。
介護休業給付について
育児休業給付と同様に、
令和2年8月1日以降に介護休業を開始している方については、
賃金支払基礎日数が11日以上の月が12か月ない場合、完全月で賃金の支払の基礎となった時間数が80時間以上の月を1か月として計算できるようになります。
さいごに
パートタイマーやアルバイトの方で、上記の具体例で示したような
1日の所定労働時間は長く、週の勤務日数が少ない雇用保険被保険者が退職した場合
には、注意が必要になります。
この法改正の内容が適用されるのは、あくまでも
「受給資格に必要な被保険者期間」が確保できないときに限られますが、
ある意味、常時発生しない例外的なケースだからこそ、見落としがちです。
これまでの経験上、こういう確認や注意をしなければならないときに限って、
「何か問題を抱えているような人がようやく退職してくれたときの離職票だった・・」
ということも十分考えられますので、実務ではミスや漏れのないように対応したいですね!