介護報酬は、原則3年ごとに見直しされます。ただ、介護職員処遇改善加算について直近でみると、原則から外れ平成29年度、令和元年度に見直しが行われているので、3年ごとではなくなっているのが現状です。
これからお伝えすることの一部は、介護職員等特定処遇改善加算の予備知識があることを前提にお伝えします。もし、介護職員等特定処遇改善加算の予備知識が無い方がいらっしゃれば、まず以下の記事をご覧になってから読み進めてください。
今回の改正の内容は3つ(①②③)
①処遇改善加算の職場環境等要件の見直し
②介護職員等特定処遇改善加算の見直し
③介護職員処遇改善加算(Ⅳ)および(Ⅴ)の廃止
ざっくりいうと、③については、弊社のクライアントでもゼロですし、取得率も0.2%~0.3%という調査結果もあるので、大きな影響はないと思います。
①の職場環境等要件については、これまで非常にハードルが低く、内容としても「言われなくてもやっているよね・・」というレベルのものでしたが、今回そのハードルが若干高くなるのではないかと思います。
②については、人数が多い事業所ほど面倒なルール(平均の賃金改善額の配分ルール)がありましたが、今回の緩和措置により算定のためのハードルが下がるのではないかと思います。弊所も申請に躊躇していたクライアントに再度提案する予定です。では、1つ1つ見ていきましょう。
①処遇改善加算の職場環境等要件の見直し
介護職員処遇改善加算及び介護職員等特定処遇改善加算の算定要件の一つである職場環境等要件について、介護事業者による職場環境改善の取組をより実効性が高いものとする観点から、以下の見直しを行うことになりました。
ア:職場環境等要件に定める取組について、職員の離職防止・定着促進を図る観点から、以下の取組がより促進されるように見直しを行う。
・ 職員の新規採用や定着促進に資する取組
・ 職員のキャリアアップに資する取組
・ 両立支援・多様な働き方の推進に資する取組
・ 腰痛を含む業務に関する心身の不調に対応する取組
・ 生産性の向上につながる取組
・ 仕事へのやりがい・働きがいの醸成や職場のコミュニケーションの円滑化等、職員の勤務継続に資する取組
イ:職場環境等要件に基づく取組の実施について、過去ではなく、当該年度における取組の実施を求める。
アの各種取り組みについて、「実効性が高いものにする」という観点から、過去ではなく、当該年度ごと(令和3年度の計画書なら、令和3年度)に取り組む必要があるということです。アの各種取り組みについては、もう既に取り組んでいるものもあるでしょうし、ほぼすべて取り組み済みという事業所もあるでしょうから、その辺りの取り扱いをどうするのか・・これら細部の疑問についてはQ&Aを待ちましょう。
②介護職員等特定処遇改善加算の見直し
介護職員等特定処遇改善加算について、リーダー級の介護職員について他産業と遜色ない賃金水準の実現を図りながら、介護職員の更なる処遇改善を行うとの趣旨は維持した上で、小規模事業者を含め事業者がより活用しやすい仕組みとする観点から、以下の見直しを行う。
・ 平均の賃金改善額の配分ルールについて、「C:その他の職種」は「B:その他の介護職員」の「2分の1を上回らないこと」とするルールは維持する
・「A:経験・技能のある介護職員」は「B:その他の介護職員」の「2 倍以上とすること」とするルールについて、「より高くすること」とする。
言葉だけではわかりづらいですよね。以下の図を参考にしてください。これまでは、特定加算を「その他の介護職員」に配分するときは、「経験・技能ある介護職員」の2分の1にしなければならなかったのですが、それが1円でも下回ればよいということになったのです。
これまでも特定処遇改善加算の算定率は、訪問介護は47.3%、地域密着型通所介護は33.2%というように在宅系で低い傾向にありました(令和2年3月時点、厚労省しらべ)。それも当然で、ルールが煩雑で分かりづらく、事務担当者の負担がこれまで以上に増えることになってしまうからです。介護・福祉の業界では、現場から「事務手続きの負担が重すぎて現場に注力できない」という声が再三上がっているため、現場業務に集中してもらうために事務処理作業を減らしていく方針とは厚労省も示してますが、現実はそのような環境とは程遠い状況です。しかしながら、介護業界は制度ビジネスなので、ずさんな事業所も一定数存在するなかで、安易に事務処理を減らすこともできないという事情もあるでしょう。この辺の匙加減は非常に難しいことだと思います。
特定加算のルールについては、誤解も多く、未だに「うちは特定加算を算定できない」と誤解されたままの事業所も多いと思います。弊社も特定加算がはじまる令和元年10月の数か月前から情報を収集し、特定加算を受給するためのアナウンスを定期的に行いましたが、やはりそれでも理解が進んでいないと感じています。
特定加算自体は、事務処理の煩雑さを乗り越えればこれまでも算定することはできましたし、特例等を用いることで事務処理の煩雑さを回避する方法も状況によっては採ることができました。今回の改正では、この煩雑さを助長していた「いわゆる2:1:0.5」のルールが緩和され、算定のためのハードルが下がることになります。
③介護職員処遇改善加算(Ⅳ)および(Ⅴ)の廃止
介護職員処遇改善加算(Ⅳ)及び(Ⅴ)について、上位区分の算定が進んでいることを踏まえ、廃止されます。ただ、令和3年3月末時点で同加算を算定している介護サービス事業者については、「1年の経過措置期間」が設けられることになります。
先述のとおり、介護職員処遇改善加算(Ⅳ)及び(Ⅴ)の算定率は、1%を切っている状況なので、ほとんどの事業所では影響はないでしょう。
令和3年度処遇改善加算計画書の提出期限について
通常、処遇改善加算等計画書の提出期限は、処遇改善加算等を取得する月の「前々月の末日まで」に行うことになっています。
例)4月から取得したい➡2月末日までに計画書を指定権者に提出
令和3年度にについては、これから関係する告示や通知書の見直し等が行われることになるため、2021年4月から取得する場合は、2021年4月 15 日までになる予定です。指定権者によって対応が異なることもありますから、必ず確認は取るようにしてください。少なくとも東京都は4月15日になる予定です。
【お知らせ】介護職員処遇改善加算(Ⅰ)及び(Ⅱ)をまだ算定されていない介護・福祉事業所さまへ
助成金を活用して、介護職員処遇改善加算(Ⅰ)を算定することができます。申請のためのハードルは若干高いとは思いますが、加算Ⅰを算定するための要件とも合致しているため、その点については丁寧にサポートをしていきます。
ただ、この助成金は令和2年度まで(令和3年3月31日)で終了する予定になっています。もし、介護職員処遇改善加算(Ⅰ)を令和3年4月から取得したい場合は、この助成金の仕組み上、加算Ⅰと助成金の要件を満たすように整備をしたうえで、令和3年2月28日までに計画書を提出する必要がありますので、時間的猶予はありません。ご興味があるかたは、以下の弊社の総合サイトからお問い合わせください。
無料相談は原則行っていませんが、この助成金の活用については30分無料(電話相談)で応じていますので、ご検討ください。
https://www.sr-noppo.com/15948581621548