労務管理で大切なことは何か?
その1つが「優しさ」であることに異論はないと思う。
優しさのない労務管理はうまくいかないし、優しさと甘さをはき違えてもうまくいかない。優しさの中には必ず相手への思いがある。それなくしてうまくいくことはないと思う。
ただ、社員に優しければ、社員とトラブルにならないということはない。
その優しさが仇になることさえある。
なぜなら、経営者が優しくても社員の仕事力が欠如していれば、いつまでも優しい対応なんてできなくなるから。
仕事力が欠如している社員を放置してしまえば、組織は秩序を失い、高い仕事力を有する社員にしわ寄せがいく。
そして、負担が過度になり、会社が改善措置を取ってくれる見込みがないのであれば、どこかのタイミングで会社に対して見切りを付け、退職をすることも十二分に起こり得る話だ。
社員への優しさが十二分に機能するのは、「社員が一定の仕事力を有すること」が大前提なのだ。
そこは間違えないようにしたほうがいい。
さらに、一定の仕事力を社員全員が有するのであれば、ルールは最小限で済むようになり、いわゆる自由度の高い(自律した)組織になっていく。
逆に、一定の仕事力を有していない社員が組織内にいれば、性悪説に立ったルールへと改変していかなければならず、自由度の低い、息苦しい組織になっていく。
その一定の仕事力を有する応募者を入社前の選考段階で見極めて内定を出すことができれば、社員に優しい経営者が労使トラブルに遭うというケースは非常に少なくなると言える。
現実的に、この見極めをする技術を保有する会社はごく少数派だけど存在するし、経営者さえ真っ当であれば、組織は必ず健全化していく。
社員とトラブルになる確率は、実際のところ採用の段階である程度決まっているし、組織の安定性は、水際対策をいかに合理的に考えて対応できるかに掛かっている。
いち早くそのことに気づけた経営者だけが、皆が主体的に動ける稀有な組織をつくり出すことができ、経営者の優しさを活かした経営ができる。
さいごに・・・
いくら経営者が社員にもっと主体的に動いて欲しいと思って、制度やルールを整えたり、教育や研修に多額の投資をしたとしても、そこにいる人が変わらない限り、主体的に動く組織に変えていくことはできない。残念ながら、それが現実。
そうであれば、どうしたら良いのか?
やはりどうしても性悪説に立って、制度やルールを整備していくしかないということになる。「社員に伸び伸びと働いて欲しい」と思ったとしても、その思いを悪用する社員がどうしても発生してしまう現実があり、制度やルールもそこに照準を当てていかなければ、悪平等や不公平感が発生してしまうことになり、組織に不協和音が発生することになるからだ。
人が良い経営者ほど、社員に優しい対応を取ることになるが、上記を理解したうえで、舵を切る判断をしてもらいたい。