労働者である限り、会社を選ぶということはできますが、大きな組織であればあるほど、上司を選んだり、同僚を選んだり、部下を選んだりすることは現実的には非常に難しい。
「誰と働くか」ということについて、ほぼ選択権がない・・。
私もメーカーの泥臭い営業職として8年弱働いていましたが、一度も上司を選べたことなどありません。そのサラリーマン時代、2番目の上司から「養父は上司を選ぶことはできへんけど、俺は部下を選ぶことはできるからな(ニヤリ)」と脅された経験はあります・・
(パワハラ確定です)。
ただ、これが人を雇う立場の経営者になれば、話が変わります。
「誰を雇うか」を判断するのは経営者自身だからです。
残念ながら現実的には多くの経営者がこの特権(入社希望者を可能な限り集めて、選び抜く権利)を手放しています。
確かに一部の業界、特に介護や看護業界などコロナ禍においても人材が不足している業界では、この特権を手放さざるを得ない現実もあります。
また、本物の「人材」に出会えていなかったり、周りに同じような問題行動を取ったりする人が多いので、その状態に慣れて(麻痺して)しまい、「人ってこんなものだろう」という認識(人には良いところもあれば、悪いところもあるというフワッとした認識)が、自らの特権を行使することの意義を失わせているのかもしれません。
ビジネス書の古典的名著とも言われているビジョナリー・カンパニー 2 – 飛躍の法則に、
「偉大な企業にするためにはまずはじめに『だれをバスに乗せるか?』ということが大事であって、適切な人をバスに乗せ、不適切な人をバスから降ろし、その後にどこに向かうべきか(目的地)を決めている」
ということが書かれています。これは誰もが知っているような一流企業や、先進的な技術を開発している企業だけが採るべき選択肢というわけではありません。
ある意味、超零細企業の「はじめての採用」から実践するべきことでもありますし、超零細企業だからこそ、この方針を貫けば、非常に柔軟で強固な組織をつくりだすことができるのです。
逆にこの方針を貫くことができず、実践することもできないからこそ、
・組織がいつまで経っても不安定なままであったり、
・定着率を上げようにも定着をさせてはいけない従業員の割合のほうが多かったり
・管理者の素養がある人材がいなかったり、
・経営者の右腕となる人材がいなかったり、
・後継者となるような人材がいなかったり、
とさまざまな組織にまつわる深刻な課題を抱え続けることになります。そして、一定数の経営者が志半ばにして事業を譲渡したり、廃業したりする確率を高めてしまうのです。
採用で失敗を繰り返さない限り、この意味はなかなか認識できないことかもしれませんが(失敗をしてもわからない人にはわからない・・という現実もありますが)、「ひとり目の採用」から経営者の特権を活かすべきだということをぜひ忘れないでください。
また、特権を放棄してしまっている現状があれば、それは「人を見極める技術」を学ぶことによって、打破することができるということに財務的にも心理的にも余裕があるうちに気づいてください。