まず、「ルールを強化したい、就業規則をもっと細かく定めたい」と考えてしまうのは、何が原因でそういう思いに駆られてしまうのかを認識されていますか?
もし、適切に認識をしていない場合は、さまざまな問題を今後も抱え込んでしまうことになるので、いまは業績も好調で、飛ぶ鳥を落とす勢いという場合でも、一度足元を見直した方が良いかもしれません。
ルールを強化したい、就業規則をもっと細かく定めたいという衝動に駆られてしまうのは、組織内部が「自分で考えて行動し、かつ、“組織のために動く”という意識がある人」が少数派となり、身勝手な行動を取る人が多数を占め始めているということです。
当然といえば当然ですが、「自分で考えて動ける人、かつ、組織のために動ける人」だけで構成されていれば、ルールの徹底なんてしなくても、各人の良識のみでうまく運営されていきます。もちろん、コロナ禍で導入が一気に進んだテレワークも問題なく運用できるでしょう。
しかし、ここで、真逆の人がひとりでもいると、あらゆるルールを導入したり、さまざまなルールを強化したりしなければ、たったひとりの身勝手な行動によって「大きな制約が必要になってしまう」のです。
もし本当に組織を変えたいということであれば、新たなルールや制度の導入だけで変えようとしないことが重要です。私自身も「経営理念を丹念に作りこむと組織が変わる」「人事評価制度を構築すれば人が成長していく」みたいな言葉を鵜呑みにしてしまい、そのサポートをして失敗した苦過ぎる経験をしたことがあるのでわかるのですが、立派な理念や制度を構築している間だけは、何か美しい未来が待っているような気がしてしまいます。しかし、それはほぼ「幻想」です。
ルールや制度の構築ではどうにもならないならどうするか?といえば、答えは至ってシンプルです。
「入口(採用)を変えていかねばならない」ということです。
しかしながら、このシンプルなことを実践できている企業は、日本全体で数パーセントもないでしょう。小さな会社は周囲に適切なアドバイスができる専門家もいないということもあり、「いやうちはまだまだ教育体制も整っていないし、超零細だから・・」と卑屈に考えてしまい、採用を変えるという意識には到達しません。また、大きな会社は、膨大な作業をこなす必要があり、一定数の採用をしなければなりません。そのため、やむを得ず学歴を優先しながらアピールに長けた人を一定数確保する…という採用になりがちです。結局、小も大も現実的には採用をなかなか変えることができないのです。
だからこそ、小規模から大規模を問わず、採用を変革できた企業は他社と圧倒的な差別化を図ることができ、この変化が激しい時代を生き抜くことができるのだと思います。
ルールを強化したり、就業規則を整備したりすることは、組織の秩序を維持したり、法令を守ったりするためには必要です。しかし、いわゆる健全な経営者が求めている”いい組織”にするための「十分条件」ではありません。
ルールを強化しなければ…という「シグナル」を感じることができたら、ある意味チャンスです。少しでもそのチャンスを活かし、現状の採用にまず疑問を持ち、変化の一歩を踏み出してください。